先日、取引先から届いたようなメールを読んでいて、ふと手が止まりました。
「お世話になっております。請求先口座が変更になりましたので、ご確認をお願いいたします」
文面は丁寧で、署名もきちんとしていて、言葉づかいに違和感もありません。昔なら「あれ、日本語がちょっと変やな」と気づけたのに、今回はどこにも引っかかるところがなかったんです。
結果から言うと、そのメールは本物でした。ただ、「本物かもしれない」と「偽物かもしれない」の区別が、文章だけではつかなくなっているんやな、と実感した出来事でした。
怪しいメールの「怪しさ」が消えてきた
少し前まで、詐欺メールには分かりやすい特徴がありました。
- 不自然な日本語
- 妙に長いURL
- 「今すぐ」「至急」と焦らせる言い回し
- 差出人名とアドレスのちぐはぐさ
「こういうところを見れば大丈夫」と、私たちはなんとなく見分け方を覚えてきたと思います。
でも今は、文章を整えるのがとても簡単になりました。AIを使えば、自然で丁寧で、それっぽい文章がすぐに出てきます。会社の雰囲気に合わせた言い回しや、相手の名前を入れた文面まで作れてしまう。つまり、「文章の違和感で見抜く」という方法が、だんだん通用しなくなってきているんです。
見るべきなのは「文章」より「お願いの中身」
そうなると、見るポイントも変えていく必要があると思います。
私が意識するようにしているのは、文章の上手さではなく、そのメールが何をお願いしているかです。
- お金の振込先を変えてほしい
- パスワードやコードを教えてほしい
- リンクを開いてログインしてほしい
- 普段と違う手順で何かを進めてほしい
こういうお願いが入っているときは、どれだけ自然な文面でも、一度立ち止まります。メールの出来がいいほど危ないこともある、というのが今の時代の少し困ったところですね。
そこで、昔ながらの「確認の電話」
じゃあどうするか。私の結論は、意外と古くさい方法でした。
メールに書いてある番号ではなく、自分が元から知っている番号に電話をかける。
ここが大事なところです。メールの署名にある電話番号は、偽物のメールなら偽物の番号かもしれません。名刺や、過去のやり取り、公式サイトなど、前から知っている連絡先を使います。
電話の内容も、難しく考えなくて大丈夫です。
「今、こういうメールをいただいたんですが、念のため確認させてもらってもいいですか?」
これだけ。相手が本物なら、「ああ、送りました」「ご確認ありがとうございます」で終わります。むしろ、きちんと確認してくれる人やなと、信頼が上がることのほうが多いんちゃうかな、と私は思っています。
「聞くのは失礼かも」の気持ちを手放す
とはいえ、正直なところ、確認の電話って少し勇気がいりますよね。
「疑っているみたいで失礼かな」
「こんなことで電話したら忙しい相手に悪いかな」
「自分が気にしすぎなだけかも」
大阪の人間って、わりと人との距離感を気にするところがあって、私も「ええか、これくらい…」と流してしまいそうになる瞬間があります。
でも、確認せずに進めて取り返しがつかなくなるより、一本の電話で済ませたほうがずっと楽です。確認は疑いではなく、お互いを守るための手続き。そう考えると、電話をかけるハードルが少し下がりました。
自分用の「小さなルール」を決めておく
その場の気分で判断しようとすると、忙しいときほどスルーしてしまいます。だから、あらかじめ自分の中でルールを決めておくのがおすすめです。
- お金に関わる変更は、必ず別の手段で確認する
- ログインやパスワードの話は、メールのリンクから進まない
- 「急いで」と言われたときほど、一回深呼吸する
- 迷ったら、とりあえず電話する
ルールにしておけば、「疑うかどうか」を毎回悩まなくて済みます。決まりだから確認する、で十分なんです。
便利な時代だからこそ、アナログが効く
メールもAIも、本当に便利な道具です。私も毎日お世話になっています。ただ、文章がいくらでも「それっぽく」作れる時代になったからこそ、声で話す、相手を直接確かめるという昔ながらの方法が、あらためて強い防御になっている気がします。
画面の中の文章は、だれでもそれっぽく整えられる。でも、いつもの番号につながった先で聞こえてくる、相手の声と受け答えは、そう簡単にはまねできません。
デジタルが進んだ分だけ、最後はアナログの一手間が頼りになる。なんだか不思議ですが、私はそれが今のいちばん現実的な対策やと感じています。
もし「このメール、なんか判断つかへんな」と思うことがあったら、返信ボタンを押す前に、受話器を取ってみてください。たった数分の電話が、大きなトラブルを防いでくれるかもしれません。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます
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