2026年2月26日木曜日

今のネットは静かすぎる

昔のネットは、もっと騒がしかった気がする。

深夜二時でも、誰かがどこかで叫んでいて、
意味のない言葉や、勢いだけの文章が、
画面の向こうから飛び込んできた。

掲示板は荒れて、ブログは熱くて、
個人サイトには、その人の体温があった。

うまく整っていなくて、
どこか不格好で、
でも確かに「生きている場所」だった。

今のネットは、静かすぎる。

タイムラインは整列され、
検索結果は最適化され、
ノイズは削られ、角は丸められている。

正しい情報、炎上しない言葉、
安全で無難なコンテンツ。

どれも正しい。
けれど、少しだけ息が詰まる。

アルゴリズムは賢くなり、
私の好みを先回りして、
欲しいものだけを差し出してくる。

驚きは減り、偶然は少なくなった。

迷子になることもなくなったけれど、
その代わり、冒険もしなくなった。

本当は、もっとざわざわしていてもいい。

知らない誰かの未完成な文章や、
まとまっていない感情や、
深夜の衝動のままに打ち込まれた言葉。

そういうものに触れたとき、
「ああ、向こう側にも人がいる」と感じられた。

静かになったのは、ネットなのか。
それとも、私たちが慎重になりすぎただけなのか。

失敗しないこと。
嫌われないこと。
正しくあること。

それを優先するうちに、
声のボリュームを下げすぎてしまったのかもしれない。

それでも、画面の奥では、
きっとまだ誰かが、
小さな声で本音を書いている。

検索に引っかからなくても、
バズらなくても、
誰にも見つからなくても。

今のネットは静かすぎる。

でも、完全な無音ではない。

耳を澄ませば、
微かなキーボードの音がする。

その音が消えない限り、
この場所は、まだ生きているのだと思う。

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