2026年6月29日月曜日

スマホの画面より外の景色を見たくなった

気づけば、またスマホを見ていた。

特に何かを探していたわけでもない。
誰かから大事な連絡が来ていたわけでもない。
ただ指だけが勝手に動いて、画面の中を下へ下へとなぞっていた。

ニュース、短い動画、誰かのつぶやき、きれいな写真。
どれも悪いものではないのに、見れば見るほど、自分の時間が少しずつ薄くなっていくような気がした。

画面の中には、世界がいくらでもあった。
知らない街の景色も、遠い国の海も、誰かの暮らしも、すぐに見られた。
それなのに、自分の部屋の窓の外に何があるのかを、しばらく見ていなかった。

ふと顔を上げると、カーテンの隙間から夕方の光が入っていた。
少し赤くて、少し疲れたような色だった。
その光が机の端を照らしていて、スマホの画面よりずっと静かに見えた。

窓を開けると、外の空気が入ってきた。
車の音。
遠くで鳴る自転車のベル。
どこかの家から聞こえる生活の音。

それは派手でもなく、特別でもなかった。
けれど、画面の中の情報よりも、なぜか今の自分に近かった。

外の景色は、何も急かしてこなかった。
見ろとも言わない。
反応しろとも言わない。
ただそこにあって、空は少しずつ色を変え、雲はゆっくり流れていた。

スマホの画面では、次から次へと新しいものが出てくる。
少し見ただけで、もう次の何かが欲しくなる。
けれど外の景色は、同じように見えて、少しずつ違っていた。

電線に止まる鳥。
夕日に染まる家の壁。
道を歩く人の影。
ベランダで揺れる洗濯物。

どれも小さなものなのに、見ているうちに心が少し落ち着いていった。

たぶん、ネットが悪いわけではない。
スマホも便利で、楽しくて、必要なものだと思う。
ただ、ときどき画面の中ばかり見ていると、自分が今どこにいるのかを忘れてしまう。

誰かの時間。
誰かの景色。
誰かの言葉。
それを見続けているうちに、自分の目の前にあるものが、少し遠くなる。

その日は、スマホを机に伏せて置いた。
大げさな決意ではない。
ただ、もう少し外を見ていたくなっただけだった。

空はゆっくり暗くなっていった。
建物の窓に明かりがつき、道の影が深くなり、昼と夜の境目が静かに過ぎていった。

何かを得たわけではない。
何かを解決したわけでもない。
それでも、少しだけ息がしやすくなった。

スマホの画面の中には、たくさんの景色がある。
でも、自分の目で見る外の景色には、その日の空気がある。
音がある。
温度がある。
そして、そこにいる自分の時間がある。

また明日になれば、きっとスマホを見る。
ネットも開くし、画面の中の世界にも戻る。

それでも、今日みたいにふと思い出せたらいい。
画面の外にも、ちゃんと景色があることを。

そしてたまには、何も探さずに窓の外を見る時間を、自分に返してあげてもいいのだと思う。


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