何かを調べたいわけでもない。
誰かに連絡したいわけでもない。
ただ、スマホを持った指が、いつもの場所にあるアイコンを押している。
朝起きてすぐ。
電車を待っているとき。
仕事や作業の合間。
眠る前の静かな時間。
一日に何度開いているのか、自分でも分からない。
タイムラインには、誰かの日常やニュース、面白い画像、怒りの言葉、役に立つ情報が流れてくる。
少しだけ見るつもりだったのに、次から次へと指が画面を動かしてしまう。
気になる投稿を見つけたわけでもないのに、なぜか閉じるきっかけが見つからない。
昔は、暇な時間があれば窓の外を見たり、ぼんやり考えごとをしたりしていた。
今は、その小さな空白を埋めるようにXを開いている。
何もしていない時間が、少し落ち着かなくなったのかもしれない。
タイムラインを眺めていると、世の中とつながっているような気持ちになる。
誰かが起きていて、誰かが何かを考え、どこかで新しい出来事が起きている。
その流れの中にいるだけで、ひとりではないように感じることもある。
けれど、見終わったあとに何が残ったのかと考えると、何も思い出せない日も多い。
たくさんの言葉を読んだはずなのに、頭の中には薄い疲れだけが残っている。
それでも少し時間がたつと、また指はXを開こうとする。
これは楽しんでいるのか。
情報を探しているのか。
それとも、ただ習慣になっているだけなのか。
たぶん、その全部が少しずつ混ざっている。
Xを開くことが悪いとは思わない。
そこから知ったことも、笑ったことも、救われた言葉もある。
ただ、自分の意思で開いているのか、癖に動かされているのかは、ときどき確かめたほうがいい。
開こうとした指を一度だけ止めて、スマホの画面を消してみる。
すると、部屋の音や外の景色、自分が何を考えていたのかが、少しずつ戻ってくる。
何も流れてこない時間は、思っていたほど退屈ではない。
Xを閉じたあとに残る静けさも、たまには悪くない。
いつの間にか身についた癖だから、無理に消す必要はない。
ただ、ときどき自分の指に聞いてみたい。
今、本当にXを開きたいのか。
それとも、静かな時間から逃げるように、いつものアイコンを押そうとしているだけなのか。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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