机の上に、ずっと使い続けている古いキーボードがあります。
新しいものに買い替えようと思えば、いつでも買い替えられるのに、なぜかそのまま使い続けています。
キーの文字は少し薄くなり、よく使う部分だけ光っています。
隙間には小さなほこりが入り、押したときの音も、買ったばかりの頃とは少し違います。
それでも、指を置くと不思議と落ち着きます。
このキーボードで、いくつもの文章を書いてきました。
うまく書けた日もあれば、何を書いてもまとまらなかった日もあります。
何度も消して、何度も打ち直して、気づけば画面の中に言葉が並んでいました。
新しい道具には、新しい気持ちをくれる良さがあります。
でも、古い道具には、自分の時間が染み込んでいるような良さがあります。
指が覚えている位置。
押したときの重さ。
少しだけ遅れて返ってくるような感触。
それらは便利さだけでは測れないものだと思います。
ネットの世界では、次々と新しいものが出てきます。
新しいパソコン、新しいアプリ、新しいサービス。
昨日まで使っていたものが、もう古いと言われることもあります。
けれど、古いものを使い続けていると、速さとは別の場所にある大切なものに気づきます。
それは、慣れていることの安心感です。
何も考えなくても手が動くこと。
道具の癖まで含めて、自分の作業の一部になっていること。
古いキーボードは、ただ文字を入力するためのものではなくなっていました。
迷った時間も、続けた時間も、黙って受け止めてくれる小さな相棒のような存在でした。
もちろん、いつかは壊れる日が来るのだと思います。
そのときは新しいキーボードを買うのでしょう。
でも、その日まではもう少し、この古い音を聞きながら文章を書いていたいです。
便利なものが増えていく時代だからこそ、使い慣れたものを大事にする気持ちも忘れたくありません。
古いキーボードを使い続けて気づいたのは、道具はただの道具ではないということでした。
そこには、自分が積み重ねてきた時間が、静かに残っているのだと思います。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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