2026年7月15日水曜日

Xの通知が鳴らない静かな夜

いつもなら、スマホの画面に小さな通知が浮かぶ。

誰かが投稿に反応したこと。
誰かが新しい言葉を流したこと。
世界のどこかで、何かが起きていること。

けれど今夜は、何も鳴らない。

机の上に置いたスマホは、眠っているように静かだった。

最初は少し気になった。

通知の設定を変えてしまったのか。
通信が切れているのか。
それとも、誰からも見られていないだけなのか。

画面を開けば、Xには今日も多くの言葉が流れていた。

怒っている人。
笑っている人。
誰かに気づいてほしい人。
誰にも見つからないように、静かにつぶやく人。

そこにはいつもの世界があった。

ただ、自分のスマホだけが鳴らなかった。

しばらく画面を眺めたあと、私はスマホを伏せた。

窓の外から、遠くを走る車の音が聞こえた。
冷蔵庫の小さな動作音も、時計の針が進む音も、普段よりはっきり聞こえる。

通知がない夜は、思っていたより静かだった。

そして、その静けさは少しだけ不安で、少しだけ心地よかった。

誰かの反応を待たなくても、夜は進んでいく。

投稿が広がらなくても、書いた言葉が消えるわけではない。

誰にも見られていないように思える時間にも、自分が考えたことや感じたことは、確かにここに残っている。

いつの間にか、通知が鳴ることを安心だと思うようになっていた。

誰かが見ている。
誰かとつながっている。
自分は一人ではない。

その証明を、小さな音に求めていたのかもしれない。

けれど、通知が鳴らないからといって、本当に一人になったわけではない。

見えないところで眠っている人がいる。
忙しく一日を終えた人がいる。
言葉を返さず、ただ投稿を読んでいる人もいる。

反応がないことと、何も届いていないことは、同じではない。

夜が深くなるにつれて、スマホの存在が少しずつ遠くなっていった。

温かい飲み物を入れて、読みかけの本を開く。

誰かの言葉が絶え間なく流れる場所から離れると、自分の中に残っていた考えが、ゆっくり形を取り戻していく。

明日のこと。
昔のこと。
本当は書きたかったこと。

通知に追いかけられているときには聞こえなかった、自分自身の声だった。

その夜、最後までXの通知は鳴らなかった。

それでも、不思議と寂しくはなかった。

静かな夜には、誰かとつながるための音ではなく、自分とつながるための時間が流れていた。

スマホの画面を消すと、窓の向こうに暗い空が広がっていた。

世界は何も言わず、ただ静かにそこにあった。

通知が鳴らない夜も、悪くない。

そんなことを思いながら、私はいつもより少し早く目を閉じた。


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